経験値
※ただいま、過去の愚痴処理中です
立ち退きまで2週間余。
無職の夫と0歳児を家において、私は夜の街に繰り出していた。
「2週間しか働けません」
そう伝えた上で面接してもらえることになった店は1軒のみ。
夜の仕事というだけで不安しかなかったが、訪ねてみるととても親しみやすい雰囲気のお店だった。
これは、所謂スナックなのかな?
この頃の私は、キャバクラやクラブ、スナックなどの区別もまるでわかっていなかった。
いや、今もよくわかっていないけど。
面接担当のママはパーマをかけたロングヘアのボリュームがすごく、
子ども時代に遊んだボードゲームの『お化け屋敷ゲーム』でみた、髪の毛が蛇の女妖怪“ゴーゴン”のような印象だった。
目力が強く、何事にも動じなさそうなその風貌に、経験値の違いを感じさせられたのを今でも覚えている。
こう書くととても印象が悪いようだが、ママはとても美人だった。
面接ではこちらの希望をしっかり伝えると、ママは私の困った様子に寄り添う姿勢をみせてはくれたが、やはり2週間で辞められるのは困ると言った。
人生は甘くない、と改めて感じた瞬間だった。
お礼を言って帰ろうとすると、
「よかったら知り合いの店に連絡してみるから、面接だけでもしてみたら?」
と背中に声がかかった。
よっぽど困った顔をしていたのかもしれない私に、最後の情けをかけてくれたのだろうか。
「お願いします」
私は振り返り頭を下げた。
教えてもらった通りに歩みを進めると、小さな雑居ビル2階に目的の店を発見した。
「はぁ・・・」
溜め息をつきながら階段をあがり、扉を開ける。
そこには夜の店一筋何十年であろう風貌のママがいた。
かたまる私にしゃがれた声で入るよう言ってきたママに、
「突然のことですのに、今日はお時間をいただきまして、ありがとうございます」
まずはお礼を伝えた。
面接では、我が家の事情もふんふんと聞いてくださり、同情の声かけもいただいたw
真顔が・・・怖いw
迫力のある風貌にビビりながらこちらの希望も伝える。
採用か不採用か、少し考え込むママを上目遣いで伺っていると
「わかった。明日から早速来てもらうわ」
と良き返事をいただけた。
え、うそ・・・。
どうしよう。
とまず思ってしまった私がいた。
仕事が欲しくて面接をしていただいたが、本当に夜の仕事をすることが決まり、かなり困惑した。
これから、知らない世界に飛び込まなくてはいけない。
結婚に失敗すると、こういうことが起こるのだということを学んだw
私の経験値は嫌な形で確実に上がることとなった。